高齢者の最期に関わった方や障害を背負った方、病気を患った方と接してきた方ほど、健康や老後、最期の時を考えます。この業界の方は、一般の方と比較し死や健康に対するリスクマネージメントに敏感です。
例えば、寝たきりになると、褥瘡が出来たり、腕や脚が変形し固まったり、身体が変形したり、特には痰が絡んだり様々な弊害が身体に生じることが多いようです。尿閉するとバルーンという管をつけたり、様々な医療的処置を受けます。しかし、施設や在宅ヘルパー等での、介護職の医療行為は限られています。
例えば、在宅酸素の方の酸素チューブを扱う行為でさえ、その方が眠ってしまったり意識がない状態か自分でもとに戻せない場合に限られます。つまり医療職が充実していないと、安楽なケアは受けられないことになります。医療職の人材派遣事業も法的に出来ません。つまり、人材力と環境が備わった事業所でないと、安心した生活は継続出来ないのです。
話は変わりますが、施設入所は心情的にも金銭的にも壁が大きいのが実態です。持病を抱える方が大半なので、冬時期になると面会制限も必要となり家族との接点も絶たれます。高齢者を抱える場所なので仕方のないことですが、ガラス越しやモニター等の媒体越しの場合もあります。時間も限られ少し物寂しい気もしますが、施設には安全配慮義務がありますので蔓延防止措置を求められます。一旦、入所者に感染が発生すると職員に派生し、行き詰ってしまう場合が多いのです。BCP(事業継続計画:よその事業所や法人と提携を結ぶこと)の策定はしていますが、知らない人に介護を受けることは、する方にとっても、される方にとっても負担が大きいのが本音です。
私達は、「自宅で過ごせる時間を少しでも引き延ばせること」や「最期の時まで、身体の変形などで出来るだけ苦しまないようにすること」、「不安を出来るだけ解消すること」を目標に運営しています。最期のとき、安楽であるためには、今の状態を可能な限り良好に保つ必要があります。
自宅で毎日転倒を繰り返していた方が、ご利用をはじめると転倒しなくなった。これだけでも大腿骨頸部骨折などの骨折を回避出来ますし、ご家族も安心して見守れます。そうすると自宅で健康で暮らせる時間も延せます。
認知症を患い、自宅介護が困難だった方が穏やかになりました。ご家族は安堵され、安心されます。麻痺し拘縮した腕を拡げることも行います。そうすると着衣に必要な可動域の拡大に伴い自分で着れるようになったり、介護が安楽になり、ご本人や家族は自宅で生活する選択肢を考えられるようになります。
これらはほんの一例にしか過ぎませんが、今の良い状態を引きばし続けることにこだわっています。悪い所は改善に努め、良い部分はさらに伸ばす姿勢を忘れないように取り組んでいます。簡単なプロセスではありませんし、リハビリの国家資格を有するものでも、介入してすぐに効果が出せるものでもありません。でも効果が出ると、安心され皆さん大変喜ばれます。
私たちの願いは、私たちも年をとりますので、いつまでお困りの方々に貢献できるか分かりません。市内の高齢化率は高まるばかりです。いずれは止まりますが、その時は少子化の時代です。だから今必要なことに着手し、未来に少しでも良い形でバトンが渡せるよう努めたいと考えております。